5打目:スコアカードを見た瞬間だけ謙虚になる男
むーは、ラウンド中だけは強い。ティーショットを曲げても、アプローチが大きくても、短いパットを外しても、なぜか言葉だけは前向きである。風、芝目、同伴者の気配、カップの照れ。原因はいくらでも見つけられる。
むー: 今日は内容は悪くない。数字には出てないだけで、ゴルフの質はかなり高いんよ。
言い方だけなら、もうベストスコアである。表情も、うなずきも、クラブを拭く手つきも、どこか満足げだ。だが、Jiボール君は知っている。むーの「内容は悪くない」は、たいていスコアカードを見る前の最後の強がりである。
Jiボール君: 数字に出ないゴルフは、だいたい言い訳に出る。
むーは聞こえないふりをする。ホールアウト後のツッコミも、本人の中では次回への課題として処理されるタイプである。
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ラウンド中は、なぜか全部まだ取り返せる気がする
ゴルフ場には、不思議な希望がある。前半で叩いても、後半で取り返せる気がする。ダボを打っても、次でバーディーを取れば戻る気がする。実際には、バーディーどころかボギーも怪しいのに、人はなぜかスコアカードを閉じている間だけ強気でいられる。
むーも、その時間だけは強い。
むー: まだ全然ある。俺は後半型やからな。最後に伸びる男は、最初ちょっと曲がるくらいでええんよ。
少しだけ余計な含みがある。本人は人生論のつもりだが、Jiボール君は、むーの足元から冷静に返す。
Jiボール君: 伸びてるの、スコアだけだろ。
この一言で、カートの空気が少しだけ静かになる。だが、むーはそれを集中の沈黙だと思い込む。都合の悪い数字を見ない力だけは、今日もシングル級である。
スコアカードを開いた瞬間、急に声が小さくなる
ラウンドが終わる。クラブを片づけ、グローブを外し、むーはまだ余裕の顔をしている。今日のショットを振り返る声も大きい。惜しかった、噛み合わなかった、紙一重だった。反省というより、ほとんど解説である。
そして、スコアカードを開いた。
カサッ。
そこには、むーが思っていたよりも少し大きな数字が並んでいた。いや、少しではない。わりと正直に大きい。ティーショットの見栄も、アプローチの説明も、入る前提で歩き出した足取りも、全部きれいに数字になっている。
むー: ……まあ、今日は練習ラウンドみたいなもんやな。
さっきまでの声量が、急にハーフスイングになる。むーはスコアカードを見つめながら、少しだけ謙虚な顔をする。ラウンド中には一度も出なかった「まだまだやな」という表情である。
Jiボール君は、転がりながら短く言った。
Jiボール君: 謙虚になるの、いつも精算前だけだな。
むーは少しだけ傷ついた顔をしたが、すぐにスコアカードを折りたたんだ。数字を小さくするには、まず紙を小さくするタイプである。
反省会だけは、急にまじめになる
ゴルフの面白いところは、ラウンド中よりも終わった後のほうが人間性が出ることだ。プレー中は強気だった人ほど、スコアカードを見た瞬間に急に反省モードへ入る。しかも、その反省は少しだけ自分に甘い。
| ラウンド中のむー | スコアカードを見た後のむー |
|---|---|
| 「今日は攻める」と言う | 「今日は確認の日やった」と言う |
| ミスを風のせいにする | 数字を練習ラウンドのせいにする |
| 短いパットを強気で打つ | パット数だけ小声で数える |
| 「まだある」と言う | 「次につながる」と言う |
本当に怖いのは、ミスショットそのものではない。ミスした事実を、最後まで数字として見ないまま終わろうとすることである。スコアカードは優しい顔をしない。むーがどれだけ言い訳を重ねても、そこに残るのは、打った数だけである。
それでも、むーは完全には落ち込まない。反省した顔をしながら、もう次のラウンドの言い訳を準備している。
むー: でもな、課題が見えたってことは成長や。次はスコアに出る。俺のゴルフ、ここから締まってくるで。
Jiボール君は、しばらく黙っていた。そして、いつもの調子で言った。
Jiボール君: 締める前に、まず数えろ。
Jiボール君の今日の一言
Jiボール君: 数字だけは、忖度しない。
むーはこの言葉を聞いて、スコアカードをもう一度だけ見た。少しだけ真面目な顔になった。だが、その時間は長く続かない。次の瞬間には、もう「前半のあの一打がなければ」と言い始めている。
むー: まあ、あのOBと、あの3パットと、あのアプローチがなければ、全然違うスコアやったな。
Jiボール君は、静かに返す。
Jiボール君: それを全部入れたのが、今日のスコアだ。
今日もむーは、ラウンド中は強気に語り、スコアカードの前では急に謙虚になり、それでも次の一打に希望を持つ。ゴルフは、完璧なスコアだけのものではない。数字に刺されて、ツッコまれて、それでもまた予約を入れてしまうおじさんにも、ちゃんと物語がある。
次こそは、むーの反省がスコアカードではなく、プレー中に間に合うところを見せてほしい。Jiボール君は、たぶん次回も最後まで数字を見ている。
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このネタは、BaySwingCupのYouTubeショート動画「スコアカードを見た瞬間だけ謙虚になる男」として、本日20時に公開予定です。
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